クイナ [水鶏]
Rallus aquaticus
水辺の茂みに潜む神秘の鳥
古くから日本の文学に登場する水辺の鳥で、唱歌「夏は来ぬ」にも歌われています。非常に警戒心が強く夜行性のため、姿を見ることは稀ですが、特徴的な鳴き声で存在を知らせます。ずんぐりした体型と長いくちばし、太い足が特徴で、飛ぶより走って逃げることを好みます。
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分類
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英名Water Rail
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大きさ全長約29cm
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体重160g
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羽の色
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寿命野生下で約5-10年(飼育下で15年以上の記録あり)
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保全状況指定なし
朝鮮半島、日本の本州中部以北、シベリア東部などで繁殖し、冬季はインド東部、中国南東部、日本の本州中部以南などで越冬します。日本では北海道・東北北部で繁殖し、関東以南では冬鳥として見られます。
河川や池沼、湿原、水田など、ヨシ原や草が茂った水辺に生息します。水際の茂みの中を好み、開けた場所にはあまり出てきません。
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行動・習性
非常に警戒心が強く夜行性です。水辺の茂みの中を素早く歩き回り、危険を感じると飛ぶより走って逃げます。飛翔能力はありますが、あまり飛ぶことを好みません。換羽期(7〜8月頃)には一時的に飛べなくなります。
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さえずり
「クイクイ」「キュッキュッ」という独特の声で鳴きます。名前の由来は鳴き声が「クヒクヒ」と聞こえることから。夜間や薄暮時によく鳴きます。
雑食性で、水辺の昆虫、カエル、小魚、エビなどの甲殻類、ネズミなどの小動物を食べます。植物の新芽や柔らかい根も食べることがあります。
繁殖期は4〜7月。ヨシ原や草むらの中の地上に、枯れ草や落ち葉を集めて皿状の巣を作ります。6〜12個の卵を産み、雌雄で抱卵します。抱卵期間は約19〜22日で、雛は早成性です。
「夏は来ぬ」で歌われているのは実はヒクイナ?
童謡「夏は来ぬ」の4番に「水鶏(くいな)声して」という歌詞がありますが、ここで歌われているのはクイナではなくヒクイナだという説があります。古くは「クイナ」という名でヒクイナを指していたためです。
根拠のひとつは季節感です。クイナは主に冬に見られる漂鳥ですが、ヒクイナは夏鳥として日本で繁殖します。夏の訪れを歌うこの曲には、夏に鳴くヒクイナの方がふさわしいのです。
もうひとつの根拠は鳴き声です。ヒクイナは「コッコッコッ…」と戸を叩くような独特の声で鳴き、古来から「水鶏の叩く」と詠まれてきました。徒然草にも「水鶏の叩くなど心ぼそからぬかは」と記されています。一方、クイナの鳴き声は「ギュイッ」という声で、風情ある表現には結びつきにくいものです。
「夏は来ぬ」を聴いたら、ぜひヒクイナの鳴き声を思い浮かべてみてください。