ホシムクドリ [星椋鳥]
Sturnus vulgaris
星をちりばめた黒い衣をまとうモーツァルトゆかりの鳥
スズメ目ムクドリ科に属する鳥で、暗い体色に星のような白い斑点がちりばめられた美しい姿が名前の由来です。光の当たり方によって緑や紫の金属光沢を放ち、翼の羽根は金色に縁取られた優美な姿をしています。作曲家モーツァルトがペットとして飼っていた逸話があり、ピアノ協奏曲第17番第3楽章にはこの鳥のさえずりを基にした旋律が用いられているといわれています。日本では珍しい冬鳥ですが、原産地のヨーロッパや移入先の北アメリカでは環境適応力の高さから大繁殖し、在来種を圧迫する外来種として問題視されており、国際自然保護連合(IUCN)が選定する「世界の侵略的外来種ワースト100」にも名を連ねています。
動画
この動画ではホシムクドリの自然な行動や鳴き声を観察できます。
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分類
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英名Common Starling
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大きさ全長約22cm
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羽の色
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寿命野生下で約3-5年
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保全状況指定なし
ヨーロッパ東部からロシア西部、バイカル湖周辺の広い地域で繁殖します。日本には亜種ホシムクドリが数少ない冬鳥として渡来し、特に西日本や南西諸島での記録が多いです。島根県や鹿児島県では毎年少数の群れが越冬しています。
農耕地、市街地、開けた林、草地などに生息します。日本ではムクドリの群れに混じっていることが多いです。
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行動・習性
くちばしを地面に差し込むようにして餌を探します。小・中群で移動しながら採食し、日本ではムクドリの群れに紛れ込んでいることが多いです。電線に止まっている姿や、牧場や畑の草地を歩き回る姿が観察されます。
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さえずり
「キュルキュル」「ジャァジャァ」とムクドリに似た声で地鳴きします。「ジュ」「ギュッ」という声や、「ギャー」「ジャー」と濁った声でも鳴きます。さえずりは多くのレパートリーを持ち、他の鳥の声を真似する能力に優れています。
雑食性で、昆虫類やクモ、植物の種子や果実を食べます。日本では柿の実を好んで食べる姿が観察されています。くちばしを地面に差し込んで土中の獲物も探ります。
繁殖地では樹洞などに営巣し、淡緑青色の卵を4〜6個産みます。抱卵期間は14〜15日です。日本では繁殖しません。
天才モーツァルトの「共同作曲者」? 葬式まであげられた愛鳥・ホシムクドリ
「神童」と呼ばれた天才作曲家、ヴォルフガング・アマデウス・モーツァルト。彼には、ある一羽の変わった「相棒」がいました。それが、美しい星模様を持つホシムクドリです。
1784年、モーツァルトはこの鳥をペットショップで購入しました。彼がつけていた家計簿には、鳥の代金「34クロイツァー」という金額と共に、ある「旋律(メロディ)」が書き残されています。
それは、自身の『ピアノ協奏曲第17番』の第3楽章のテーマでした。
興味深いことに、モーツァルトが書いた旋律に対し、ホシムクドリは少し音程を変えて歌ったといいます。
しかし、モーツァルトはその「間違ったアレンジ」を否定するどころか、家計簿の隅に「Das war schön!(なんて美しい!)」と書き込み、大いに気に入っていたのです。
さらに驚くべきは、この鳥への溺愛ぶりです。
3年後に鳥が死んだ際、モーツァルトはわざわざ友人を招いて葬式まで執り行いました。参列者は喪服を着て、モーツァルト自身がこの鳥のために書いた「追悼の詩」を読み上げたといわれています。
今では「世界の侵略的外来種」として嫌われることもあるホシムクドリですが、天才作曲家にとっては、インスピレーションを与えてくれるかけがえのないミューズ(芸術の神)だったのかもしれません。