ヒシクイ [菱喰]
Anser fabalis
ヒシの実を好む国の天然記念物のガン
ヒシクイは、カモ目カモ科マガン属に属する大型のガンの仲間です。和名は水草のヒシの実を好んで食べることに由来し、くちばしで実を割る音が聞こえてくることもあります。1971年に国の天然記念物に指定されています。古くは「グワン、グワン」と聞こえる鳴き声から「ガン」と呼ばれ、日本の秋冬の風物詩として親しまれてきました。森鷗外の小説「雁」に登場するのもヒシクイではないかとの説があります。日本に渡来する亜種には亜種ヒシクイと亜種オオヒシクイがあり、太平洋側には亜種ヒシクイが、日本海側には亜種オオヒシクイが多い傾向があります。
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分類
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英名Taiga Bean Goose
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大きさ全長約78cm
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羽の色
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寿命野生下で約10-15年
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保全状況指定なし
ユーラシア大陸北部(シベリア北部)で繁殖し、冬季には中国や日本へ南下して越冬します。日本では冬鳥として宮城・秋田・新潟・茨城・滋賀・島根などに渡来します。北海道では春秋に通過する旅鳥です。
池沼、河川、水田、湿地、海岸などの水辺に生息します。夜間は大きな水場の中央に集まって休み、日中は水田や湿地で採食します。見通しのよい広大な耕地を採食地とします。
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行動・習性
家族単位の小群で行動し、数百~数千羽の大きな群れでねぐらをとります。亜種ヒシクイはマガンより早く暗い時間にねぐらを飛び立ち、遅くまでねぐら入りをします。警戒心が強く、人が近づけない場所を休息場とします。V字隊形で渡りを行います。
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さえずり
「グワッハハッ、グワァハハッ」「ギャハハン、ギャハハン」など濁った太い声で鳴きます。マガンよりも太く低い声で、飛翔中にも互いに鳴き交わします。亜種オオヒシクイは「ガハハン」とやや低い声で鳴きます。
植物食で、水草のヒシの実を特に好みます。水田の落ち穂、草、茎、根、果実、種子なども食べます。亜種ヒシクイは主に水田で、亜種オオヒシクイは沼沢地でマコモの根やヒシの実を食べる傾向があります。
繁殖期は5月~7月で、シベリアのツンドラやタイガで繁殖します。メスが地上に地衣類やコケ、枝や葉を使った皿形の巣を作り、4~5個の卵を産みます。抱卵はメスが行い、25~29日で孵化します。ヒナは孵化後すぐに巣を離れ、約40日で飛べるようになります。